shivanii

studio482+店主。
仕事は台所道具と料理にまつわることをいろいろやっています。イベント、WS、執筆活動、コラム記事など。
ミシマ社「みんなのミシマガジン」で「みんなのおむすび」コラム連載中。著書に「野菜料理の365日」「野菜のごちそう」「焼き菓子レシピノート」最新本「野菜たっぷり すり鉢料理」(アノニマスタジオ)只今、各地でイベントを展開中。
肩書きはなし(で生きたい)。

記事一覧(21)

山只華陶苑を訪問

studio482+をオープンしてからずっと販売をしている商品のひとつに、加藤智也さんの「すり鉢」があります。 その美しく、実用性と精神性を兼ね備えているすり鉢に惚れ込み、彼にラブレターばりの手紙を書いたのは5,6年前だったか。
工房で彼の作品であるカフェオレボールを「すり鉢にしてください!」とお願いして製作していただいた「Chai」も、今やstudio482+を代表する作品となっています。 拙著「野菜たっぷり すり鉢料理」(アノニマスタジオ)も、加藤さんとの出会いがなかったら、出版されていなかったと思います。

加藤さんなしでは、今の私の仕事はないぐらい...。
彼は私の恩人です。 その加藤さんに会いたくて、久しぶりに仕事場へお邪魔させていただきました。
場所は岐阜県多治見市。いつもの笑顔で、男前の加藤さんが出迎えてくれました。「土物って不思議な力がありますよねぇ。」と言う私に、
「土物というのはアタリがやさしいですよね。他の素材にはない独特のやわらかさがあると思います。」と加藤さん。 「親がすり鉢でとろろ汁を作っていたのを見て育ちました。香りや音などを感覚で覚えていて、今は僕がとろろ汁を作っています。それを今度は子供に教えていく。そうやって親から子へと繋ぐことができるのが嬉しいです。」
とニコニコしていた加藤さんが印象的です。

私が大切にしている「台所道具の心」の話で盛り上がって、なんだかホクホクとした気持ちで帰ってきました。

山只華陶苑・加藤智也さんの「おろし皿」が初入荷

金属製おろし金を使い続けて思ったこと。食卓にこのまま出せればいいのに...。しかも、一般的なおろし金は、食材をすったときに汁がこぼれるから、器に移し替えなければなりません。最近は「受け皿付おろし金」もありますけれど、これだ!というものにはまだ出会っていません。そんなときに山只華陶苑の8代目、加藤智也さんのおろし皿を発見...。シンプルで美しくて、ため息が出ます。おろし皿は加藤智也さんの2代前、おじいさんの代から造っています。戦中、金属類がすべて没収され、家庭におろし金が消えたときに、陶器製おろし皿の製作を頼まれたそう。歴史を感じます。おじいさんから2代目、3代目と引き継がれ、デザインも少しずつ変わっていき、現在の形となりました。おろし皿の歯は、手でひとつひとつ突起を造っていきます。作り方は金属のおろし歯と同じ技法なんだそうです。あまりにも大変な手作業で、加藤さんも一度は根を上げました。それで試しに「型」に入れる方法でやってみたところ、すった食材の味が全然違ったそうです。加藤さんは、迷わず「型」ではなく「手」を選択しました。手で製作しているから、線もまっすぐじゃないし、おろし歯もよい意味で揃っていない。そこがまた胸キューンとなるところです。

「おむすびのにぎりかた」が発売されました!

3年間コラムを書いてきた「みんなのおむすび」(ミシマ社のウェブマガジン’みんなのミシマガジン’)が、このたび書籍となって発売されました。写真家、野口さとこさんと一緒に、あてもなく始めたおむすび取材をスタートさせたのが4年前ぐらいだったか。それを編集社「毬藻舎」の友成響子さんが、知る人ぞ知る「ミシマ社」に企画を持って行ってくれて...そして始まったコラムです。いろいろな分野で活躍されている方々におむすびを握っていただき、お話を伺い、その方の考え方、生き方を通しておむすびを観ていくというコラム。なかなかどうして骨太な内容だと思います、へへ。この本はおいしいおむすびをにぎるための心を探る内容で、技術的なものではありません。けれど、おむすびこそ精神性が大事だと思うのです。 おむすびに必要なのはごはんと塩だけ。誰でもこの2つの材料さえあればできます。そこが料理と違うところ。



三角でも、丸でも、俵型でも、 大きくても、小さくても、無骨であっても、みんな等しく正しい。 こうしなきゃダメ、あーしなきゃダメ、を

どんなものでもいい、自由であれ、っておむすびが教えてくれる。

恥ずかしさやプライドも捨てて、無心になれる。



誰でも握れるおむすび。でもひとりひとり、みんな違うおむすび。

おむすびはその人自身であり、オブジェですね。自身の心がおむすびに込められてはじめて、食べる人に伝わるものです。

おむすびのおいしさは技術的なことよりも「大切な人から大切な人へ握る」心の有り様で変わってくるのではないかと、取材を終えて思います。 どの方のお話も印象深かかったですねぇ。そして、どのおむすびもおいしかった。少し紹介しますと、例えば、京都妙心寺「花園禅塾」の塾長である羽賀浩規さんにお話しを伺ったときは、もう鼻から火が吹くほど興奮状態でした。お坊さんにおむすびを握ってもらえるなんて夢のようだったし、お坊さんになりたかった私としては(これほんとの話、笑)、妙心寺に尋ねて行くだけでも胸が高まりました。「人生は回り道していい。いらないものや役に立たないものはひとつもない。経験は邪魔にならないのです。」という羽賀さんの言葉が印象に残っています。

ごはんをおいしくする「おひつ」

この道具はごはんのためにあります。おひつは謂わば「ごはんの家」。この中で、炊きたてのごはんがさらにおいしくなります。ごはんが炊き上がったらおひつに移して食卓へ。「いただきます」までのほんの数分間でごはんの湿気が落ち着いて、ふんわりおいしくなっていることに、毎度驚きます。おひつが「ある」と「ない」じゃ、食卓がまるで変わってしまう。おひつはごはんの余分な湿気をまず吸収し、ごはんの湿気が足りなくなってくると、今度は湿気を放出します。だから冷めてもふんわり。実に木は賢い。昔から木のおひつは3種類あります。江戸おひつ。→ 桶蓋を被せるタイプ(画像左)曲げわっぱ → 木の板を曲げて作るタイプ(画像右上)地びつ → 蓋に2本取っ手がついている平蓋タイプ(画像右下)さて、どれを選んだらいいか。それはもう好みで選んでください、としか言いようがありません...。「地びつ」は使ったことがないので正直、分かりません。地びつは江戸おひつの変形版でしょうか。蓋の部分が違います。江戸おひつと曲げわっぱを実際に日々の生活の中で使ってみて思うことは、お弁当箱は「曲げわっぱ」、炊いたごはんは「江戸おひつ」がいいなぁ。曲げわっぱとおひつ、それぞれの仕事があると思います。曲げわっぱは繊細な造り。こぢんまりとした「入れ物」として良いと思います。江戸おひつは重厚感があり(実際の重さは軽いです)、親分みたいで風格があります。「おひつ」はごはんのために一途に仕事をする道具です。ごはんを食べ楽しむために江戸おひつは最適な道具だと思います。ま、フランクな話、曲げわっぱも江戸おひつも、上質な道具というところでは同じです。やっぱり好みでしょうか。価格の違いも大きいと思いますが...。で、私が選択したおひつは江戸おひつ。製作しているのは徳島県で70年、樽を造っている岡田製樽です。

なべしきハウス 

土瓶が初入荷!

我が家で大活躍の土瓶がstudio482+に初入荷いたしました。伊賀焼・土楽窯の製作。丁寧にろくろで製作された土瓶です。製作に手間と時間がかかるため、数年に1度しか焼かないそうです。今回は福森道歩さんに悲願して、笑、製作していただきましたっ!この土瓶の最大の魅力は「やかん」と「急須」両方の仕事をしてくれること。最近は「土瓶」という名で売られてても直火不可も多く、やかんとして使える土瓶が少ないのが現状です。製作に手間がかかるということを考えると、いたしかたないか...。土瓶で沸かした湯はまろやかになります。コーヒーやお茶がおいしくなる。尖った味のかどが取れる。それは遠赤外線効果の働きなのですが、実際に陶器(混ざり物なし)で煮炊きするとおいしくなるのは、結局「自然の働き」としか言いようがないのです。土の不思議です。ちなみにやかんは「薬缶」と書きます。薬缶は鎌倉時代から薬(漢方薬)を煮出すのに利用されていました。金属製のやかんは薬草や漢方の成分と化学反応を起こすため、やかん(薬缶)は土瓶が最適だとされてきました。
様々な用途の茶葉を煮出すために、土瓶は昔から重宝されている台所道具なのです。 漢方薬を煎じている人にも土瓶は重宝するのではないかしら。私はもっぱら「三年番茶」を煮出しています。リーフそのまま入れると、あとのお手入れが大変だから「お茶パック」(100円ショップで売っています)に入れてね。煎茶や中国茶は湯を急須に入れ替えてますが、お茶パックに茶葉を入れば急須にもなります。ちなみに800mlほど入るので、4人分のお茶が作れます。